「原点回帰」、「生成変化」

あなたと付き合う前の私について思い出してみる。わたしの中の全てがめちゃくちゃになっていた。たかいところから飛んでみることや、ロープで自分を吊るしてみることまで本気で考えていた。もともと、心に傷を抱えていたあなたと付き合いはじめたのは自らの罪滅ぼしのためで、あなたを幸せにすることでこれまでの自分の罪を贖おうとしていたのだった。時間は経過した。いつしか本来の目的はわたしの中でもっと矮小なものにすり替わっていっていた。わたしは何かを見失っていた。あなたは常にわたしから離れられないものだといつのまにか思い込んでいた。そして、わたしの定義による自己満足的な「親切」をあなたに押し付けるばかりになっていたかもしれない。そんな自分本位がわたしの今のあなたへの複雑な気持ちにつながっているのだろう。何事にも見返りを求めるべきでない。(ある人からの見返りという形のものだけでなく、善行に呼応し幸せがひとりでに訪れるという形の見返りをも指す。)見返りというシステム自体が内部に構造的欠陥を孕んでいて脆いし、そもそも、この世には「全くもって自己満足な行為でない」と言えるものは何一つないのだから。

むかし、あなたに、あなたのおかげでわたしは今ここに生きていると言われたことがあった。しかし、わたしも同様なのだ。あなたのおかげで今、付き合う前に比べ普通の生活を送ることができている。あなたを夢中で幸せにしようとした、いや、わたしの自己満足のために夢中で走ったことでわたしの雨はいつのまにか曇りへと変わっていたのだ。

あなたと付き合う前をわたしの原点として「原点回帰」をしよう。今のわたしと原点のわたしを比べてみよう。その時、きっとあなたへの「感謝」の二文字だけがわたしを満たすだろう。

・原点の取り方は任意である
・人の安定性を考慮する場合、原点は低く取るほどよい


《そんな風に考えるようなわたしもいる。
けれども、結局わたしという存在は刻々と変化してゆくことに変わりはない。だから、わたしは日記という記録に「今」のわたしを保存することで、わたしを「今」に回帰可能なものとし、痛みを緩和しようとしている。》